口のまわりが赤くて、かさかさ、ぶつぶつが出来るけど、どうもニキビの様でもない、という時に口囲皮膚炎や酒さ様皮膚炎(しゅさようひふえん、ステロイド酒さ)という病気を疑います。

口囲皮膚炎は20~40代の女性に生じる事が多く、口まわりやほうれい線のあたり、頬などに赤みと軽い落屑(かさかさ)丘疹膿疱(小さいぶつぶつ)を繰り返す病気です。

日光曝露、細菌感染、毛包虫感染、保湿剤や化粧品の影響で生じた二次的な細菌叢の変化などが原因で生じたり、生理前や妊娠中に発症したりします。

酒さとの違いは長くほてりや赤みが続いているかどうかになります。

ステロイド外用がきっかけの場合は酒さ様皮膚炎という病気を疑います。
かぶれや脂漏性皮膚炎、アトピーなどをきっかけにステロイド外用による治療を始め、不適切に長期に使用すると酒さ様皮膚炎を発症することがあります。
ステロイドを塗った人すべてに生じる訳ではありません。
もともと顔のほてり感などの酒さの素因が基盤にある人は広い範囲で酒さ様皮膚炎を発症し、口囲皮膚炎の素因を持つ人は口まわりに酒さ様皮膚炎を発症します。

初期の頃や色々な治療が加わっている場合は、口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎、酒さは完全に区別しきれないことも多く、鑑別が難しいことがあります。

ほてりなどの酒さの素因を持つ人は石鹸やシャンプー、リンス、化粧品などにより一次刺激性やアレルギー性接触皮膚炎を生じたり、日光の刺激で皮膚炎を生じたりしやすく、それに気づかずステロイドを漫然と長期間塗っていることで発症することも多いため、皮膚炎を繰り返している場合は一度生活環境を見回して悪化する原因がないかどうかを考えてみるとよいです。
出来るだけお化粧や強いクレンジングなどは控え、低刺激の洗顔料で強くこすらないようにする、刺激の少ない化粧品で保湿をする、急激な温度変化を避ける、カフェイン、香辛料、アルコールなどの刺激物を避ける、日光を避けるなどの生活上の注意も必要です。

さて、一旦酒さ様皮膚炎を発症してしまうと、塗れば塗る程皮膚炎が悪くなるし、中止をするとさらに悪くなる(リバウンド)という悪循環にはまり込んでしまいます。

まずは「ステロイドを中止すると症状は悪くなるけれど乗り越えれば必ずよくなります」としっかり説明し勇気づけて、頑張ってステロイドをやめてもらいます。

補助療法として抗生物質の内服をしながら、プロトピックやメトロニダゾール(保険適用外)などの外用薬を塗り、リバウンドが強い方の場合は少しずつステロイド外用薬の強さや量を減らしていく場合もあります。
症状によっては漢方薬を併用することもあります。

こうして乗り越えていくと、一時的なリバウンドのあと3週間から3ヶ月程度で症状は改善していきます。
このリバウンドの時期がとても辛いので、定期的に受診していただき、励ましつつ治療を行って行くので、良くなった時にはお互いに同士のように嬉しくなります。

また気をつけて頂きたいのは、ステロイド自体が怖い薬なのではないということです。
しっかりと病状を判断した上で、ステロイドを充分な強さや量で、必要な期間のみ外用しているかどうかということです。
かぶれや湿疹でステロイドの外用が必要と判断される場合は医師の指導のもとにしっかり外用して下さいね。