こんにちは。
今年は梅雨明けも早く暑い夏が続きそうですね。

暑さで汗が出るのは生理的なものですが、局所的に過剰に汗をかいてしまい困るという病気があります。
手のひら、足の裏に限局して発症する多汗症を原発性掌蹠多汗症といいます。
日本の疫学調査では5.3%とのことで、実はかなりの方が悩んでいると思われます。
学生の頃答案用紙が汗で濡れてしまい困っていた、すぐ靴がビショビショになり困っているという方結構いらっしゃるのでは?

掌蹠多汗症は
・ 左右対称性である。
・ 日常生活に不都合が生じる。
・ 少なくとも1回/週以上の多汗のエピソードがある。
・ 初発年齢は25歳以下である。
・ 家族歴がある。
・ 睡眠中の発汗は止まっている。
の6項目中2項目以上に当てはまり、局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6ヶ月間みとめられることで診断されます。

治療法には次のようなものがあります。

  1.  塩化アルミニウム液外用療法
    塩化アルミニウムの含まれた溶液を外用する方法です。
    20%塩化アルミニウム液を夜寝る前に手や足などの患部に塗り眠り、朝洗い流します。効果が弱い場合は綿の手袋にポリエチレンの手袋などを重ねて密封療法をすることもあります。
    数週間毎日外用して、症状が軽快して来たらその後は週1〜2回外用を続けます。
    簡単に試せる治療ですが、指の間や手首など皮膚の薄い所に刺激性の皮膚炎が起きることがあります。
  2. 水道水イオントフォレーシス療法
    多汗部位を水道水に浸し直流電流を流して通電することで発汗を抑える治療法です。
    電流を流し発生する水素イオンが汗のでるあなの部分に障害を与え狭くさせて発汗を抑えると言われています。
    クリニックに通院していただき20分間水道水をはったトレイに手足を浸し通電します。
    週に1〜2回程度で開始し症状が軽快して来たら間隔をあけていきます。
    少しぴりぴりしたりしますが、副作用の少ない治療です。
    妊娠中や治療部位近くに金属が入っている方は治療が出来ません。
  3. A型ボツリヌス毒素(ボトックス)療法
    A型ボツリヌス毒素は神経の先端に付着するとアセチルコリンという物質の遊離を抑制して神経の活動をブロックし汗の分泌を抑制します。
    手足に密に注射をする治療で、かなりの注射の痛みを伴います。
    握力の軽度低下がみられることがあります。
  4. 内服療法
    抗コリン薬のプロパンテリン臭化物(プロ・バンサイン)を内服する治療があります。
    外用やイオントフォレーシスなどが無効の場合に試すことがあります。
    口の乾きや便秘、眠気、目の調節障害などの副作用がみられることがあります。
    高齢者、妊娠中の方、前立腺肥大や不整脈のある方、緑内障など目の持病がある方は内服出来ません。
  5. 胸腔鏡下胸部交感神経遮断術
    内視鏡下で胸にある自律神経を高周波で凝固する治療です。
    効果は高いですが、全身麻酔のリスクや代償性発汗、神経損傷、Horner症状などの合併症をおこす可能性があります。
    当院では塩化アルミニウム液や内服薬の処方が可能です。
    イオントフォレーシスは導入予定となっておりますので、入り次第お知らせします。
    腋窩のボトックス治療は行いますが(自費)、手足のボトックス治療は行っていません。
    胸腔鏡下胸部交感神経遮断術をご希望の場合は大学病院にご紹介いたします。